アメリカは医療費が高いことで有名ですが、日本と違って国民健康保険や社会保険のような公的な医療保険が無く、それぞれが会社を通したり、個人的に民間が提供する医療保険に加入する必要があります。
民間の医療保険のプランは無数にあり、一体どれを選べば良いのか迷ってしまいます。
もちろん、各々の事情によって入るべき医療保険は変わってくると思いますが、節税の観点からするとHealth Savings Account (HSA)を伴う保険に加入することをおすすめします。
Health Savings Account (HSA)とは
HSAは税優遇のある医療用貯蓄口座のことで、High Deductible Health Plan (HDHP)と呼ばれる健康保険に加入している方が持つことのできる口座です。
アメリカの個人年金口座であるIRAの医療費版のような口座で、税優遇によって個人の医療費の貯蓄を推奨し、怪我や病気の際にはその貯蓄から医療費を支払うといった仕組みとなっています。
HSAへの拠出は雇用主と個人の双方ができ、2021年の場合には年間個人で$3,600、世帯で$7,200まで拠出可能(55歳以上の場合はさらに$1,000追加で拠出可能)です。
雇用主がHSAに拠出する金額は任意ですが、401(k)の雇用主によるマッチングと同じく、従業員にとっては非常に嬉しい制度となっています!
HSAが推奨されるのは、HSAへ拠出した金額や、HSAを通じて得たキャピタルゲイン、HSAを通じて支払う適格医療費(Qualified Medical Expenses)に対しては課税が免除されることが大きいです。
似たような制度でFlexible Spending Account (FSA)というものがありますが、FSAの場合、拠出した金額を年内に使用しないと、その残高を失ってしまいます。
一方、HSAは年内に残高を使い切れない場合でも基本的に無期限に繰り越すことが可能です。
また、65歳以降になれば、罰金なしで引き出した金額分の税金を支払えば医療費以外にもHSAで貯めたお金を使用することができます。
High Deductible Health Plan (HDHP)とは
HSAを保有するためには、HDHPに該当する保険に加入している必要があります。
HDHPとして認められるためには、2021年の場合では年間の医療費自己負担額(Deductible)が$1,400(世帯は$2,800)以上でかつ、医療負担上限額(Out of Pocket Maximum)が$7,000(世帯は$14,000)以下である必要があります。
HDHPはその名の通り医療費自己負担額がその他の医療保険よりも高く設定されていますが、保険料金自体は通常低く設定されており、病気をあまりしなければ保険料金を大きく節約し、HSAを利用することで税制面の優遇や長期的な投資効果を得ることができます。
加入方法と使用方法
雇用主がHDHPとHSAを提供する民間医療保険プランを提供する場合には、そちらに加入すればHSAを使用することができますが、仮に雇用主がこれらのプランを提供しない場合には個人的にも銀行や投資会社の窓口やオンラインでHSAを開設することが可能です。
HSAを保有すると、デビットカードが発行されるので、医療費や医薬品代をこの口座から支払う際にはこちらのカードを使用します。
HSAが使用可能な適格医療費になりますが、病院での医療費はもちろん、処方箋代、眼鏡やコンタクトレンズの購入費用、歯科費用、一部の市販薬が該当します。
また、別記事で書いたように、先日マスクや消毒液の購入費用についてもHSAが使用可能と発表されました。
HSAが使用可能な適格医療費について詳しく知りたい方はIRSが発行する「Publication 502: Medical and Dental Expenses」を御覧ください。
https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/p502.pdf
なお、将来日本など米国外に引っ越した場合でも、条件さえ満たせば、米国外の医療機関でかかった医療費もHSAで支払えますので安心ですね。
注意点
適格医療費以外の目的でHSA口座のお金を使用した場合、通常の所得税に加えて20%の罰金が課されます。
ただし、先述したとおり、65歳以降であれば、所得税はかかりますが、罰金なしでHSAからお金を引き出すことができます。
なお、HSAは連邦の制度であるため、州によっては税優遇を認めておりません。
2021年時点ではカリフォルニア州とニュージャージー州がHSAの税優遇を認めておりませんが、基本的にその他の州では所得税の控除が受けられます。
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