今回はWilliam O’Neil氏の成長株発掘法シリーズの第8回目となります。
前回までの記事を見逃した方は是非下記のリンクからご一読ください。
William O’Neil氏の投資手法の詳細については是非実際に書籍を購入してしっかりと咀嚼していただければと思います。
CAN-SLIMの「M」: Market Direction
CAN-SLIMの「M」は、「Market direction(市場の方向性)」を指します。
この要素では、市場全体の動向やトレンドが投資判断に与える影響に焦点が当てられています。
以下は、「M」に関連するいくつかのポイントです:
- 全般市場のトレンド: 成功する銘柄を選ぶ際には、まず全体市場のトレンドを把握することが重要です。強い相場では多くの銘柄が上昇しやすく、逆に弱い相場では厳しい状況が予想されます。
- メジャーな指標の確認: 主要な市場指標やインデックスの動向を確認します。これには、S&P 500やダウ・ジョーンズ・インダストリアル・アベレージなどが含まれます。これらの指標は市場の広範なトレンドを示す手がかりとなります。
- 大量の株が上昇しているか: 成功する銘柄を見つける際には、多くの銘柄が上昇している強い相場が望ましいです。強い相場では、リーダーシップ銘柄も簡単に上昇しやすくなります。
- 分散投資の考慮: 市場が広範な上昇トレンドにある場合、分散投資を行うことでリスクを軽減できます。成功する投資家は、市場の動向に敏感で、適切な分散を考慮したポートフォリオを構築します。
成功する銘柄を選ぶ際には市場全体の状態を考慮し、相場のトレンドを理解することが重要です。
これまでに学んできたCAN-SLIMの七つの原則のうち、六つの条件を満たす銘柄を見つけても、マーケットの方向性を正確に判断できなければ意味がありません。
市場が下降トレンドの場合、保有している株式の4銘柄のうち三銘柄は平均株価とともに急落する可能性があります。
多くの人が2000年や2008年に大きな損失を被ったように、投資家も同様に大きな損失を被る可能性があります。
そのため、現在が上昇トレンドか下降トレンドかを正確に判断できる実績と信頼性のある分析方法を学ぶことが重要です。
プロの投資家やブローカーでさえ、このような必須の技術を持っている人は少ないです。
多くの投資家は他人に頼って投資判断を下しています。
しかし、これらの相談役や助言者がマーケットがリスクの高い下降局面に入ったと判断できる信頼性のあるルールを持っているかどうかは疑問です。
ただし、マーケットの方向性を知るだけでは十分ではありません。
上昇トレンドが初期段階なのか終盤なのかを知ることが重要です。
また、マーケットの現在の状況を正確に把握することも重要です。
マーケットを取り巻く環境が悪化しているために価格が下がっているのか、通常の中期的な下落に入っているだけなのかを理解することが求められます。
国の経済状況を考慮して、市場が通常の動きをしているのか、それとも異常な強さや弱さを示しているのかを判断するためには、マーケット全体を正しく分析する方法を学ぶ必要があります。
それにはまず、基本的な論理を理解することから始めるべきです。
マーケット全体とは?
「マーケット全体」という言葉は、通常、主要な市場指標を指しています。これらの包括的な指標は、一日の取引状況の強さや弱さをおおまかに把握し、ときには最新のマーケットトレンドの兆しを示すためのガイドとなります。以下はその一例です。
- S&P 500
- 主要企業500社の平均株価を示すスタンダード&プアーズの指標で、ダウよりも広範で現代的な市場の動向を反映しています。
- Nasdaq Composite Index(ナスダック総合指数)
- 動きが激しく、市場の最新状況をよく反映している指標。ナスダック市場は、マーケットメーカーのネットワークを通じて取引され、若く革新的で急成長を遂げる企業が多く上場しています。ハイテク業界にやや偏っています。
- Dow Jones Industrial Average(ダウ工業株30種平均)
- 大型株30種によって構成された指数。以前は景気敏感株の工業銘柄を中心にしていましたが、最近では広がりを見せ、コカ・コーラやホーム・デポなども含まれています。時代遅れかつ一時的な人為操作が起こりやすいとも言われています。
- NYSE Composite Index(NYSE総合株価指数)
- NYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場している全銘柄を対象に、時価総額加重方式で計算される指数。
マーケット全体の指数を毎日分析する
弱気相場では、株価は寄り付きで強く、引けで下落する傾向があります。
逆に、強気相場では、寄り付きで弱く、引けで上昇する傾向が見られます。
市場のトレンド転換は短期間で発生することがあるため、毎日市場平均株価を観察する必要があります。
これらの主要な株価指数を上手に利用することで、マーケットの動向や方向性をより直接的で実用的かつ効果的に判断できます。
補助的な指標に過度に依存することは避けるべきです。
正確なタイミングを測る実証が存在しないため、数十種類に及ぶテクニカル指標や経済指標を使っても、市場の行動を正確に予測することは難しいです。
ニュースレターや専門家の意見に振り回されず、独自の判断を持つことが重要です。
特に、悪いニュースが多いときに市場が上昇する傾向があることも歴史が示しています。
マーケットが天井を打ったら、保有株を売却して一部を現金化し、信用取引を縮小して口座を守ることが重要です。
個人投資家ならば、1~2日で資産を現金化し、信用取引から手を引くことができます。
市場が落ち着いたら、再び信用取引を再開することができます。
市場の天井で現金化の機会を逃すと、先行きが不透明な市場で急速に株価が下落する可能性もあるため、慎重な行動が求められます。
市場の低迷から身を守る
ナポレオンは、「戦いの最中にけっして躊躇しないことが敵よりも有利に立つ極意である」という言葉を残し、実際にはその決断力で長年にわたり勝利を収め続けました。
株式市場もまた戦場であり、迅速な判断が投資家の成功に影響を与えます。
市場が天井を打った兆候を見つけたら、迅速に行動し、保有株を売ることが必要です。
市場が次々と頭打ちをし、下方向に大きく転換する兆候が見られたら、即座に行動して手持ちの株を市場価格で売却し、株式資産の25%以上を現金化するべきです。
指値注文を使うよりも、成り行き注文を使用することが勧められています。
小額の価格差にこだわっていると、売却のチャンスを逃してしまう可能性があるためです。
信用取引口座を持っている場合、行動力がより求められます。ポートフォリオ全体が信用取引で半分の資産を借りている場合、株価が20%下がると資金は40%減少します。
株価が50%下がれば、資金は一気に失われてしまいます。
信用取引で弱気相場を乗り越えることは避けるべきです。
損切りの逆指値注文を利用する
逆指値注文を設定すると、あらかじめ特定の売値を設定して、市場が天井を打ち下降トレンドに入った場合に自動的に株を売却することができます。
逆指値注文を設定すると、指定した価格まで株価が下落した際に成り行き注文として実行され、機械的に多くの株が売却されます。
これにより、投資家は市場の変動に即座に対応でき、損失を最小限に抑えることができます。
ただし、一般的に逆指値注文は注意が必要です。
逆指値注文を使用すると、投資家の取引戦略や意図がマーケットメーカーに露呈され、損切り注文を利用して株価を意図的に下げる可能性があります。
そのため、通常は逆指値注文を使用せずに、保有ポジションを慎重に観察し、あらかじめ明確な損切り価格を設定する方が好ましいとされています。
ただし、株価を常にモニターすることが難しい場合や、損切りが難しい状況で逆指値注文は有効なツールとなります。
物理的な制約や感情的な要因によって損切りが難しい場合、逆指値注文は役立つことがあります。
マーケットの天井を見極める方法
マーケットの天井を見極めるには、主要な指数であるS&P500、NYSE総合株価指数、ダウ工業株30種平均、ナスダック総合指数などを毎日注意深く観察することから始まります。
上昇トレンドが続いている中、ある日を境にマーケット全体の出来高が前日よりも増加する一方で株価指数は失速し、動かなくなるという現象が見られることがあります。
この状況を「株価の上昇を伴わない出来高の増加」と呼びます。
その日の平均株価が必ずしも下げて引ける必要はありませんが、通常は下げる傾向にあります。
これは機関投資家による株式の大量売り、すなわち「売り抜け」の状態を示すものであり、その日の高値と安値の価格差が前日よりも大きくなることもあります。
天井を打つ直前では、通常四週間から五週間にわたって三日から五日間にわたり、売り抜けが起こります。
言い換えれば、市場がまだ上昇中である際に売り抜けが発生する傾向があります。
これが売り抜けを見極める投資家が極端に少ない理由の一つです。
四週間から五週間で明確な売り抜けが複数回起こると、その後の市場はほぼ必ず下落に転じることが一般的です。
また、二週間から三週間でも、四日にわたって明確な売り抜けが見られれば、それまで上昇していた市場が下落する可能性が高まります。
一部の場合では、市場が新たな高値を試し戻る過程で、売り抜けが比較的長い期間、六週間以上にわたることもあります。
弱気相場の警告
主導銘柄がつまずき始め、代わりに低価格でより投機的なボロ株が浮上し始めると、投資家は注意が必要です。
停滞株は市場を牽引して株価を上昇させる力がないため、市場が上昇した日に最も活発だった銘柄の中にボロ株が増える兆候は要注意です。
これは単に弱い銘柄が市場を先導しようとしている可能性があることを示しています。
最高の銘柄ですら先導できなかったものを、最悪の銘柄が長期間先導し続けることはあり得ません。
天井での反転は、通常、平均株価が小さなベースから抜けて新高値圏内に向かい始めてから三~九日ほどの間に発生します。
これは天井形成パターンの初めから終わりまでの期間が比較的短いことを示唆しています。
天井をつけた後でも数カ月間は持ち直し、前の高値水準かそれ以上の新高値近くまで値を戻すことがある点にも留意が必要です。
このような現象には心理学的背景があり、多くの投資家が本当に正しいときに正しい行動をとれない傾向があるためです。
マーケットの底を見極める方法
弱気相場の到来を感知して手持ちの株式数を減らした後、次に考えるべきは、いつ再び市場に参入すべきかということです。
市場に早く戻りすぎると、一時の上昇が持続せずに資金を失う可能性があります。
一方で、大幅に回復する直前で躊躇すれば、大きな機会を逃すことになります。
この場合も、マーケット全体の平均株価が頼りになります。
感情や個人的な意見よりも、マーケットの動向がより信頼性があるからです。
株価の調整時期では、その規模にかかわらず、いずれかの時点でマーケットが上昇を試みることがあります。
しかし、焦ってその波に飛び乗ると損失が生じる可能性があります。
マーケットが新たな上昇トレンドに入ったことを確認できるまで、慎重に待つことが重要です。
高値への試しは、主要な平均株価が下落の後に上昇して引けると始まります。
例えば、ダウが午前中に急落したが午後に回復して高値で引けた場合や、ダウが下がって引けたが翌日に回復した場合などが考えられます。
通常、実際に上昇して引けた日を試しの初日と見なしますが、例外もあります。
腰を据えて、じっと我慢して待つことが成功の鍵です。
平均株価と出来高を一時間ごとに確認する
マーケットの動向を的確に観察できるトレーダーは、特に重要なマーケットの転換期において、市場の平均株価と出来高の推移を一時間ごとに調査し、それを前日の同時間の出来高と比較する作業を行います。
マーケットが天井をつけて初めての下落後に、戻りを試す際には、出来高の推移を一時間ごとに確認することが最も効果的です。
出来高の増加が止まったり、減少したりする動きを把握できるでしょう。
さらに、株価がその日の後半で上昇する勢いが弱まったのに出来高が増えてきた場合など、戻りが力不足で頭打ちになる可能性が高いサインと見なされます。
同様に、平均株価が以前の安値水準に到達して支持線(投資家が下落を望まない心理状態が働く安値水準)を試している場合も、出来高の観察が有益です。
大量の売りが出来高に現れた場合、市場に大きな下落圧力がかかっていることが示唆されます。
過去の安値を株価が下回ってから数日経っても、出来高が増えていない場合や、平均株価が下がり止まり出来高が一~二日上昇する場合など、これらのパターンが見られれば、「振るい落とし」(マーケットがトレーダーに対して大きな売り圧力をかけ、損切りを誘導することも多い状況)の可能性があると判断できます。
これは、弱い株主が排除された後に株価が再び上昇に向かう兆しであることを示唆しています。
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