アメリカに渡航、移住する方は、現地で怪我や病気になったときのことが心配になる方も多いと思います。
アメリカは医療費が非常に高額なことで知られており、ちょっとした怪我で受診しただけで数百ドルを請求されるケースもあります。
ちなみに私も先日自転車に乗っている際に手と顔にちょっとした怪我をしてしまい、軽い気持ちでクリニックへいったのですが、簡単な診察の後に消毒とバンドエイドを貼ってもらっただけで$300も請求されました。
そんな高額な医療費を少しでも安く済ませるために医療保険に加入することがアメリカでは必須ですが、日本からアメリカへやってきた方は、アメリカの医療保険制度のややこしさに困ってしまいますよね。
アメリカでは日本と異なり公的な医療保険はMedicareやMedicaidなど高齢の方や低所得者の方にしか提供されていません。
従って、一般的にアメリカでは多くの方が民間の保険に加入しています。
民間の保険会社はそれぞれが異なる保険プランを提供しており複雑化しているのが現状で、アメリカ人でさえ自身の保険内容を把握していない人が少なくありません。
今回の記事では、アメリカの医療保険制度と保険明細書の見方について解説していきたいと思います。
アメリカの医療保険制度
日本では原則的にすべての国民が国民皆保険という公的な医療保険に加入していますが、アメリカでは公的な医療保険に加入できる方は非常に限られており、一般的に多くの方は民間が提供する医療保険に加入しています。
日本では自己負担額は原則3割負担ですが、アメリカでは加入する民間の保険によって負担額などが異なっており、医療保険料も高い傾向があり、保険に加入できない方がたくさんいるのが現状です。
オバマケア
そんな現状を打破するために、オバマ元大統領の政権下でAffordable Care Act、通称オバマケアが2014年1月に施行され、全ての人が医療保険に加入し、医療を受けられるように改善が行われました。
ただ、日本の国民皆保険とは全く異なっており、オバマケアは民間保険会社の医療保険プラン加入を義務付けることを目的としています。
この制度により、基本的に医療保険に加入していない方は罰金が課されるようになりましたが、トランプ政権下の税制改革で連邦レベルでは2019年1月から保険に加入していなくても罰金を課されることが実質的に無くなりました。
オバマケアのポイントとして、持病を理由にした医療保険加入の拒否を禁止したり、健康状態によって保険料を上げることを禁止したりすることが挙げられ、これらの制度はトランプ政権下の税制改革以降も引き続き有効となっています。
また、個人が医療保険に加入できるのは、年1回のOpen Enrollment Periodの期間(11月1日から12月15日)のみとなりました。
この期間中に申請した保険は、翌年1月1日から開始となります。
期間外には、法律で定められた一定の条件(結婚、離婚、団体保険の喪失など)を満たす人以外、個人用の健康保険には加入できません。
なお、オバマケアでは、保険がカバーしなければならない最低基準が制定され、保険プランは、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの4つのレベルに分けられました。
ブロンズは保険料が一番安く、プラチナが一番高いレベルとなっており、ブロンズは医療費の約6割を保険がカバーするプラン、シルバーは7割、ゴールドは8割、プラチナは9割となります。
ネットワークとは
アメリカには、主にHMO (Health Maintenance Organization)、PPO (Preferred Provider Organization)、POS (Point of Service Plan)、EPO (Exclusive Provider Organization)という4種類の医療保険ネットワークがあります。
各民間保険会社は上記のネットワークと契約しており、契約外のネットワークを利用すると保険が使えなかったり、自己負担額が増えてしまいます。
種類 | 概要 |
---|---|
HMO | 主治医(Primary Care Physician)を決め、原則、その主治医を通して治療を行います。保険料が安く設定されているものの、緊急時以外、原則として保険会社のネットワーク内にある医師・医療機関を利用しなければ保険診療が適用されません。 |
PPO | 保険会社と契約したネットワーク内から好きな医療機関を選べ、ネットワーク外の医療機関を利用した場合には自己負担が通常より高くなります。紹介状なしで専門医にかかれます。保険料はHMOと比べて高く設定されています。 |
POS | HMOとPPOのハイブリッドといえるプランであり、主治医は決めるものの、ネットワーク外の医師・医療機関を利用することもできます。保険料はHMOとPPOの中間あたりです。 |
EPO | 医療機関をネットワーク内から好きに選べますが、ネットワーク外の医療機関には保険が適用されません。 |
歯科保険と眼科保険
アメリカでは、一般的に歯科と眼科(メガネやコンタクトの購入を含む)の保険は、医療保険とは別プランとなっており、それぞれ加入する必要があります。
保険明細書の見方
Explanation of Benefits (EOB)と呼ばれる保険給付明細書には、非常に多くの専門用語が羅列してあり、初めてEOBを見る方は混乱してしまうかもしれません。
そんな方たちのために、EOBを理解する上でポイントとなる専門用語を説明させていただきます。
用語 | 意味 |
---|---|
Allowed Amount | 保険でカバーされる医療サービスにおいて、保険給付計算の対象となる金額。請求総額から割引額や保険給付対象外の医療費が控除された後の金額。別名Approved Charge、Allowable Charge、Eligible Expense、Member Rate, Negotiated Rate、Payment Allowance。 |
Amount Billed | 利用した医療サービスに対する医療機関からの請求額。 |
Amount Paid | 保険会社が被保険者へ払う金額。 |
Co-Insurance | Deductibleを超えた後、保険加入者が支払う自己負担割合。保険プランによって自己負担割合は異なる。 |
Co-Pay | 診察や処方薬を受ける際に窓口で支払う一定の負担金。 |
Deductible | 年間免責額。設定金額を超えるまで自己負担。設定金額を超えると、初めて保険でカバー。 |
Discount | 医師、病院およびその他の医療機関と、それらが加盟するネットワークとの間で事前に取り決められている割引額。 |
Explanation of Benefits (EOB) | 保険給付明細書。医療保険を使って受診すると保険会社から送付。 |
Ineligible Charge | 既に給付請求処理されている金額や保険プランではカバーされない金額。 |
Network | 割引料金で医療サービスを提供するという契約を保険会社とかわしている、医師や病院などの医療機関のグループ。ネットワーク内の医療機関を利用した場合、自己負担額が割引となる。ネットワーク内の医師をIn-Network Provider、ネットワーク外の医師をOut-of-Network Providerと呼ぶ。 |
Open Enrollment Period | 医療保険に加入できる期間。 |
Out of Pocket Maximum | 年間に払う自己負担額の上限。自己負担額が上限を超えた後は保険会社が全て支払う。保険更新日(多くの場合1月1日)にリセットされる。 |
Premium | 保険会社に払う保険料。 |
Preventive care | 予防医療(健康診断、予防接種など)。 |
Primary Care Physician (PCP) | 主治医。 |
Provider | 医療サービスを提供する人や病院。 |
Service Date | 医療サービスを利用した日付。 |
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